特定調停の六つのメリット
特定調停には六つのメリットがあります。①の費用が安いなどは、
特定調停の最大のメリットといえるでしょう。
【メリット①】費用が安い
特定調停の最大の利点は、自分で申し立てることができ、費用負担が少なく
てすむということです。
司法書士に任意整理手続きを依頼しても、1社あたり2~3万円はかかります。
しかし特定調停であれば、裁判所によって異なりますが、1社あたり印紙500
円と切手代400円を納める程度ですので、1社1,000円と考えておけばよいで
しょう。ほかの借金整理のやり方より、ずいぶん安くなっています。
【メリット②】借金の原因は問われない
特定調停では借金の原因が問われません。
破産手続きの場合には、借金の原因が何かによって手続きが異なりますが
特定調停の場合は、裁判所を利用したとしても、借金を抱えるに至った原因が
手続きに影響を与えません。
【メリット③】取立てが止まる
取立てが厳しいけれど、弁護士や司法書士に頼むだけの手持ち費用もないと
いう場合に、特定調停を申し立てれば、取立ては禁止されます。申立後、2~
3日以内に裁判所から債権者に連絡がいきます。
【メリット④】債権者の承諾がなくても支払い計画を立てることができる
債権者から提出された取引履歴に基づき、調停委員が債務者の毎月の支払い
可能額から支払計画を立てたにもかかわらず、債権者が承諾しないというケース
もあります。この場合でも調停委員は、その職権で必要な決定をすることができ
ます(民事調停法17条に基づくことから17条決定と呼ばれています)。
この17条決定は、債権者の承諾なくして決定することから、債権者はこの決定に
異議(不服)を申し立てることができます。異議が出ると決定は効力を失いますが
多くの業者は異議の申立をしないといわれています。
【メリット⑤】官報に載らない
後述する個人再生手続きや破産手続きの場合、手続きが開始されると、政府
発行の官報に名前が載ります。特定調停では官報に名前は載りません。
【メリット⑥】強制執行を止めることができる
債務者と債権者との間で公正証書を作成しているとき、多くの場合は公正証書
には執行認諾文言(債務を履行しない際にはただちに強制執行を受けても異議の
ないということを承諾すると示す文言)が付されています。この執行認諾文言があ
ると、債権者は裁判を起こして判決書をもらわなくても、公正証書に基づき債務者
の財産(たとえば給与)を差し押さえるなど強制執行をすることができます。
給与が差し押さえられると、毎月の支払金額が不足し、特定調停手続き自体を
困難にさせてしまいます。もちろん、債務者の生活に支障が生ずることにもつなが
りかねません。
そこで特定調停では、「事件を特定調停によって解決することが相当であると認め
られる場合において、特定調停の成立を不能にし、もしくは著しく困難にするおそ
れがあるとき、または特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるときは・・・・
民事執行の手続きの停止を命ずることができる」(特定調停法7条1項)と定められ
ています。
特定調停は経済的更正のために設けられた制度です。複数の債権者がいるのに、
強制執行によって1社だけ優先的に債権を回収させては、支払い原資が不足し、
特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあります。そのため、強制執行を停止す
ることができるようになっているのです。
強制執行を停止するためには、担保として相当額を積み立てるのが普通ですが、
特定調停の申立人はそもそも「経済的に破綻するおそれのある債務者」を対象に
していますので、無担保での執行停止が認められています。
もっとも、強制執行を免れることのみを目的として特定調停の申立が濫用されてい
る事例もあります。そのため裁判所によっては、一定の担保を立てなければ執行
の停止を認めないという運用がなされているところもあります。申立前に裁判所に
確認しておくことが必要です。
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